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薬価を真面目に考える

Sankei Web 経済 薬価の「毎年改定」先送り 業界反発、参院選にも配慮(07/30 01:51):

公定価格は実勢価格を上回っており、毎年実勢価格に近づけるだけで、国庫負担を大幅に削減できる。

 ええっと、ツッコミどころはたくさん有るんだけど。
 まず、公定価格と実勢価格、市場価格って何? 薬品公定価格が「薬価」で、実勢価格と市場価格が「卸値」でしょう。「薬価」と「卸値」の差が、厚労省やマスコミが言うところの「薬価差益」ですね。
で、その「薬価差益」ですが。本当に「益」なのか?という所をきちんと議論せずに、昔のイメージのまま「差益」という名前で使われ続けているのが問題です。

 10年以上前であれば、卸値が薬価の半分くらいだったり、1箱買うともう1箱付いてきた・・・という逸話もあるくらい薬は安かった(実際には薬価が高かった)らしく「差益」というに相応しい状態だったそうです。少なくとも、薬で損をする事はあり得ませんでした。しかし、(政治家による政策の失敗で)財政難となり、どうしても予算を削らないといけなくなった時、医療費に白羽の矢が立てられ、薬価差益に目をつけられたのです。その言い分が、「薬で儲かると、不要な薬をたくさん出すようになるから良くない」でした。それからというもの、薬価は(基本的には)下げられ続けています。

 ただ、「薬価」と言うのが、市場価格というか「卸値」と単純には比べられないという所は知られていません。理由の一つは、保険の点数制度。もう一つは、消費税です。
 複雑な話なのですが、まずは点数制度について。薬価 1錠 15円の薬があったとします。これを処方するとき、10で割って五捨五超入(四捨五入ではありません)すると1点となります。1点は10円です。つまり、15円の薬を10円で処方する場合もあるってことです。完全にです。別の例では、薬価 1錠 6.4円の薬を2錠処方すると12.8円ですが、10で割って五捨五超入すると1点となってしまいます。これも1日分で2.8円の損です。28日分処方していたら? 78.4円の差損が生じているのです。
 次に消費税について。薬価 100円の薬があったとして、卸しは大体92%〜94%くらいの価格を出します。すると、一見6〜8%の薬価差益があるように思うでしょ? 違うのです。納入する際には消費税が上乗せされて、96.6〜98.7円になってます。一方、いつの間にか薬価には消費税分が含まれているという解釈になっていて、薬価が100円となっていたら、消費税分の上乗せ無く100円なのです。つまり、差はわずか3.4〜1.3%になってしまいます。ただ、薬の種類によっては、この数%分さえなくて、本当にマイナスになるものもあります。
 それでも、わずか数%でもプラスなら良いのでは?と思われる人がいるかもしれませんが。そこで思い出して欲しいのは、維持・管理コストです。例えば100錠購入して、100錠全部使い切ったら、初めてようやくそれだけの価格になるのです。例えば、1日3回飲む薬を(患者さんの都合などで)4週間分しか処方する機会が無く、7錠余ってしまったとしましょう。すると、92円×100錠×1.05=9660円で納入したのに、100円×3錠×28日=8400円しか薬価ではもらえません。完全に赤字です。
 じゃあ、赤字になるから、処方しないでおくか? というわけにもいきません。必要な物は、損でも入れなければならないのです。また、一般の商売なら在庫処分として余ってる分を格安で売り払う事もできますが、薬の場合はそれもできません。在庫処分のために不要な薬を出すような事は、それこそ本末転倒だし、患者さんにとっても不幸です。するとロスは避けられず、逆算すると15%くらいは維持管理コストとしてマージンが必要です。

まとめると。

  • 現在の薬価ではすでに、「薬価差損」になってるケースが多々ある。
  • 薬の健全な流通のためには、薬価に維持管理コストを反映させるべき。
  • 薬価に含まれてるという消費税分をはっきりさせておかないと、将来もしも消費税が上がった時に、増税分をまるっと医療機関が負担することになり、とてもフェアーとは言えない。

という事です。こういう視点でいけば、

薬価差益を享受する医療機関などの反発は強く、自民党内からの参院選への影響を懸念する声にも押された格好だ。

「薬価差益を享受する」からはほど遠く、現在でも損しながらやりくりしてる状態であり、これ以上下げる事に反発するのは当然と理解して頂けるでしょう。「薬価差益を享受」なんて書き方をする新聞は悪質です。現状を調べてもいない無知な記者です。
さらに、もうちょっと別の視点では、

薬価は今年4月に引き下げられたが、「2年に1度の改定」では、この間に市場価格が下がっても対応できない。そこで厚労省が打ち出したのが、市場価格との差を放置しない毎年改定だ。

 「改定」に対応するのにもコストが掛かるのはご存知ですよね? 厚労省の方で改定のために費やすお金は税金です。これこそ無駄遣いでは? また、医療機関でもコストが掛かります。ただでさえ診療報酬を減らされているところに、余分なコスト負担。改定対応のための報酬なんてありません。病院がどこかに使う(再投資)できるはずだったお金が、役人の都合で浪費されて行くのです。そうやって考えると、本当に無駄なお金が浪費される事になるわけで。こんな机上の空論を一生懸命考えて税金から給料を貰っている人達がいるかと思うと、腹立たしくなります。

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