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子供向けの和製ミュージカルがダメな理由・その2

 アンパンマン・ミュージカルを観て、さらに過去に観てきたキティちゃんのミュージカルやしまじろうのコンサート等の日本のキャラクターのショーが何故面白くないのか? その理由を考える第2話。
 一つの理由は(先のエントリーで書いたように)運営側の配慮不足。そして、もう一つの根本的な理由は・・・ストーリー、テーマ、演出が稚拙だって事です。

 いずれのキャラクターも、テレビなどですでに確立されたイメージがありますので、大きく逸脱はできません。映画とかならテンポよく進めれば時間の余裕があるので、新しいキャラクターを登場させて、大胆なストーリー展開も可能でしょう。でも舞台では、場面転換や途中の休憩などで時間をとられるので、新しいキャラクターを登場させ、説明し、活躍させる時間はないでしょう。既存の(説明済みの)キャラクターを活用して、紋切り型のストーリー。その制約は仕方ない。仕方ないながらも、その制約の中で、工夫されたものが観たいのですが・・・。
 大抵の場合、テレビなどより大幅にスケールダウンしてますね。アンパンマンは空を飛べないし、アンパンチでバイキンマンが吹っ飛ばない。まあ、仕方ないとはいえ、そこを演出でなんとかカバーしてもらいたいところ。
 また、物語のキーになる「困難」も、大したことないものが多い。「おー、どうなっちゃうんだ?」っていう程の緊張が無い。
 そもそも、舞台に動きが少ない。書割りがいくつかあって、その中を着ぐるみ来た人が右往左往するだけだもの。

 さて。その辺のところが、くまのプーさんではどうだっかというと・・・。
 まず、舞台が開始前から、変な人が出てきて寸劇をやってます。これも客を退屈させない工夫でしょう。サーカスのピエロみたいな感じで、その人達が本編でもあっちこっちで小ネタを披露してます。小ネタと言っても、さりげなく技が光っていたりします。また、ピエロ以外に、語り部に当たる人が出てきて、物語をスムーズに進行します。
 お馴染のキャラクターは、いたってテレビ通り。呑気で、自分勝手です。ストーリーの進行を任せたら、いつまでたっても舞台は終わりそうにありません。ですが、前述の人達がサポートしてくれるおかげで、そのキャラクター通りの性格でいられるのです。
 かといって、冒険が平凡なものかと言うと・・・いやいや、とんでもない。プーさんは空を飛ぶし、すごい強風に煽られて、見知らぬ森の奥へ飛ばされてしまいます。←これが、大人でも納得できるくらいの説得力で表現されていました。飛ばされてる最中、ピエロも一緒に飛ばされてるのはコミカルだし、風の強さを表現するのに役立っています。使ってる物はたぶんベルトコンベアだけなんですけど、演出の妙なんでしょうね。
 そんな大きな困難があるから、目が離せない(大人も退屈せずに見ていられる)し、最後に大団円が迎えられるのです。要約すれば「プーの誕生日に、プーとピグレットが飛ばされて、なんとか戻ってきて、誕生日のパーティーをする」ってだけで、テレビ版でもありがちなストーリーですが。舞台ならではの表現で、見終わった後に「面白かった」という感想を持つ事ができました。

 翻って日本のキャラクターのお話では、判で押したように、こんなテーマが込められています。
「愛と勇気(または夢)があれば、願いは叶う」
・・・まあ、将来があるお子様が観る物なので、悲観的なテーマよりは、前向きな方がいいです。ですが、あまり露骨に「愛だ、勇気だ」と言われても、説教臭いだけ。酷い時は、キャラクターに喋らせたりしてますからね。そういうのは、見た人が結果として感じるべき物です。押し付けでは心に響きません。
 それに、きれい事ばっかりってのも、白ける理由です。世の中は、呑気な人がいたり、おっちょこちょいな人がいたり、自分勝手な人がいて、思い通りにはならない物です。だけどそれらが協調し合って成り立っているのです。幼稚園くらいになればむしろ「優等生ばっかりじゃない」って事は子供の方が良く実感してるだろうし、そういうリアリティって子供向けの見せ物だとしても必要なんじゃないかと思います。

 プーさんの世界の場合は、プーさんは呑気で自分勝手、ティガーは飛び跳ねて自分勝手、ラビットは考え過ぎて自分勝手。その中で、ピグレットだけ人に振り回されておろおろしてる。なんというか、そこら辺にいそうな性格ばかり。それでいて殺伐とせずに、物語が成立する。テレビ版でもそうだし、舞台でもその設定を全く変えずに持ってきて、舞台として成立させている。
 正直、ディズニーは好きじゃないんですが。悔しいけど、巧いなぁと感心します。日本のキャラクター物も、本当に観る人が楽しめる物を真剣に考えて創って欲しいです。

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Comments

こんにちわ。(おはようございます)
たまたま入り込みました。で、ちょっとコメントさせてください。

ディズニーonアイスなどの大きな体育館を使用してのショーは、館内での飲食がそもそも許可されている会場を使うことが多いです。
しかし、キティやしまじろうくんが廻る地方の1500人程度の会館は一律、飲食禁止となっております。
これは主催者側の努力不足とかという問題ではなく、日本の劇場文化の問題です。
また多くの有名キャラクターは自由度の高いオリジナルミュージカルと比べて、版権者側のたいへん複雑な承認を得てGOサインがでます。
例えば、あるキャラクターミュージカルのプロデューサーが「子どもは、もっといたずら好きで。良い子でない。子どもは聞き分けが良くない。だから少しそういう部分を盛り込んで、演出したい」と答えて、かなり揉めたお話をうかがいました。
仕込み開始から、僅か3時間程度で幕を開けるための、決して充分とは言えない舞台規模。
それでも、スタッフは「ロビーでの記念撮影で満足させるのではなく。ステージで満足してもらう」ものを真摯に目指しております。

Posted by: 田舎のおんちゃん | 2006.08.09 06:49 AM

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